大学生向け教育用ボードゲーム「Docentis」で非認知能力も促進

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非認知能力とは?

非認知能力は、テストの点数のように数値化しにくい心の働きを指します。自制心や協調性、やり抜く力、創造性などが含まれ、人生の長期的な成功に大きく影響すると言われています。文部科学省やOECDでも重要性が強調されており、学力だけでは測れない「人間力」として注目されています。

教育用ボードゲーム「Docentis」とは

「Docentis」はスペインの研究者チームがデザイン思考を取り入れて開発した、ユーロゲーム形式の教育用ボードゲームです。プレイヤーは将来教員となることを目指す大学生となり、授業計画やクラス運営をシミュレーションします。カードや個人ボードの管理、協力や交渉を通じて課題解決を図る設計となっており、コミュニケーション力や戦略的判断力を育むことを目的としています。

研究の概要

International Journal of Serious Games(2025年9月号)に掲載された論文では、スペインの教育大学で「Docentis」の学習効果が検証されました。対象は体育教育を専攻する大学4年生で、授業内でゲームをプレイした実験群18名と、従来の講義のみを受けた統制群9名を比較し、学習成果と非認知能力に与える影響が調べられました。

成績と非認知能力の向上

結果として、実技課題の平均点はゲームをプレイした学生が8.56点(SD=0.83)、プレイしていない学生が7.31点(SD=1.45)で、約1.2点の差が確認されました。効果量は1.131と大きく、ゲーム群の94.44%が7.5点以上を獲得したのに対し、統制群は55.55%にとどまりました。失敗(5点未満)の学生は両群とも確認されませんでした。

学生の声から見える学び

研究では、従来のスライド中心の講義に集中しづらい学生がいる一方、ゲームを取り入れた授業では「新鮮さ」や「主体性」を感じたとの報告がまとめられています。プレイ中にはカード管理、戦略的判断、協力や交渉が求められ、こうした体験が学びへの没入感を高めたと記述されています。

非認知能力への波及効果

論文では、ゲームプレイを通じて計画性、柔軟性、協働、批判的思考、戦略的判断、感情の自己調整といったソフトスキルに触れる機会が得られるとまとめられています。実行機能そのものは測定されていませんが、学習心理学の観点からは繰り返しプレイによって記憶の定着や知識更新を促す「間隔反復効果」の可能性も指摘されています。

まとめ

ボードゲームは娯楽の枠を越え、学習や人材育成の分野でも注目されています。Docentisの研究成果は、ゲームを取り入れた授業が大学生の成績向上と非認知能力への好影響を示唆しており、今後の教育実践における活用が期待されます。

参考リンク

大学生向け教育用ボードゲーム「Docentis」研究論文(International Journal of Serious Games, 2025)

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