非認知能力とは?基礎と育み方ガイド

「非認知能力って何?」に最短で答える入門記事です。まず要点、次に背景と定義、最後に家庭・学校での実践までを一気に把握できます。
- こんな人向け:基礎から知りたい/何から始めるか迷っている/評価や測定に不安がある
目次
非認知能力の定義
非認知能力とは、テストやIQのように数値化して測りにくい、感情・態度・行動に関わる力の総称です。自制心、やり抜く力、協調性、計画性、主体性、レジリエンス、コミュニケーションなどが含まれ、学びの持続性や人生の長期的な成果に関わる基盤とされています。
注目される背景
21世紀型能力や社会情動的スキルへの関心が高まり、学力だけでは説明できない学び・適応・幸福感の差に目が向けられるようになりました。学校現場でも探究や協働など過程や態度に重心が広がり、政策や教育メディアの発信を通じて家庭・学校双方での理解が進んでいます。
認知能力との関係
認知能力と非認知能力は二者択一ではなく相互補完の関係です。基礎学力を支える学習習慣や自己調整(非認知)が学びの継続と質を高め、結果的に認知面の伸びにも寄与します。目標設定・計画・振り返り(メタ認知)や、粘り強さ・自己効力感が重要です。
代表的な要素
自己制御・自律、やり抜く力、協働・社会性、主体性・内発的動機、レジリエンス、コミュニケーションなど。これらは状況や経験に応じて育まれ、固定的な属性ではありません。
なお、想像力(イメージする力)と創造性(新しく生み出す力)は関連しつつも別概念です。本記事では両者を区別して扱います。
各社の整理(学研・ベネッセ)
非認知能力に含める具体項目は組織によって表現が異なります。ここでは学研とベネッセの例を示し、共通する観点を整理します。
学研教室が挙げる10の力
~地図のない激変の時代~ 身につけておきたい10の力
- 自己肯定感:他人の評価を気にせず自分を大切にできる
- 自己効力感:失敗を怖がらずに挑戦することができる
- 自制心:先を見据えて感情と行動をコントロールできる
- 柔軟性:自分と違う意見や変化に対応することができる
- 共感力:相手の立場に立って思いやることができる
- 協働力:他人と協力して最適解を見つけることができる
- 社会性:良好な人間関係を構築し社会で役立つ一員となる
- 主体性:自分で考え進んで行動することができる
- やり抜く力:自分で目標を決めて達成するまで頑張れる
- 回復力:困難な状況でも心を回復し適応することができる
ベネッセが挙げる代表的な13の非認知能力
ベネッセの特設ページでは、非認知能力を13項目に体系化し、領域ごとに整理しています。
- 全ての能力の土台:自己肯定感(自尊感情/自己受容感)
- 対自分の能力:主体性/グリット(やり抜く力)/創造性/好奇心/自制心/柔軟性/想像力
- 対他者の能力:共感力/コミュニケーション力/社会性/協働力
- 結果として身につく:自信
- 自己肯定感
- 主体性
- グリット(やり抜く力)
- 創造性
- 好奇心
- 自制心
- 柔軟性
- 想像力
- 共感力
- コミュニケーション力
- 社会性
- 協働力
- 自信
共通観点へのマッピング
用語の違いはあっても、概ね以下の観点に整理できます。
- 自己概念・自己評価:自己肯定感(自尊感情/自己受容感)/自己効力感
- 自己調整・粘り強さ:自制心/やり抜く力(グリット)/忍耐力/回復力(レジリエンス)
- 動機づけ・主体性:主体性/意欲/好奇心
- 社会性・関係構築:共感力/コミュニケーション力/協働力/社会性
- 創造・探究:創造性/柔軟性/想像力
- 結果として現れる:自信
評価語や粒度は異なりますが、学びの持続性(自己調整×動機づけ)と、関係性・表現(社会性×コミュニケーション)、新規性(創造性)が共通核として位置づけられます。
家庭での育み方
安心の土台づくり(承認と過程の言語化)、日課と役割(軽責任の継続で自律と自己効力感)、小さな目標と振り返り(週1の家族ミーティング等)、失敗の再定義(次の具体策へ)、遊びと挑戦(試行錯誤や協働の機会)を意識しましょう。
学校・学習での育み方
協働・探究の課題設計(役割分担と共同意思決定)、プロセス評価(ルーブリックやポートフォリオ)、振り返りとメタ認知(KPTやリフレクション・ノート)、形成的フィードバック(行動と戦略への具体的指摘)が効果的です。
注意点・落とし穴
根性論の強要は逆効果。ラベリングの危険にも注意し、短期の数値化にこだわりすぎないこと。認知と非認知の二項対立に陥らず、両輪で育てる設計が鍵です。
はじめの一歩(実践)
- 承認の言語化:結果ではなく過程を具体語で称賛(例「計画どおり10分集中できたね」)。
- 小さな約束:一日1つの役割(配膳・ゴミ出し)を固定し、達成を見える化。
- 週1の振り返り:KPT(Keep/Problem/Try)で短時間の家族ミーティング。
- 選択肢の提示:大人が決めすぎない。「AかB、どっちからやる?」で主体性を促す。
- 挑戦のサイズ調整:成功確率6割の課題設定で「やり抜く力」を育む。
- 協働の設計:役割を決めて共同で家事・制作・ゲームに取り組む。
まとめ
非認知能力は「学び続ける力」の土台です。安心の土壌、適切な挑戦、振り返りと承認、協働の機会を整え、短距離走ではなく長距離走の視点で、ゆるやかな成長を可視化しながら伴走していきましょう。関連:大学生向け教育用ボードゲームによる非認知能力の研究
FAQ
- Q. 測定できますか? A. 完全な数値化は難しいため、ルーブリックやポートフォリオなど質的評価と長期的な記録を併用します。
- Q. 小学生からでも遅くない? A. いつからでも育ちます。幼少期に限らず、日課・役割・振り返りで段階的に伸びます。
- Q. 厳しく叱った方が伸びますか? A. 恐怖ベースは短期的効果のみ。承認と選択権で内発的動機と「やり抜く力」を育てる方が持続します。